編成権は視聴者にゆだねられる時代に
各放送局に「編成」があるから、ボクたちは朝・晩・深夜とTPOにあわせた番組をスケジュールどおりに見てきたのだが、もうそこには価値を見いだせなくなってきている。
日本では、ネット広告費が1814億円(前年度比5割増)と急増し、ラジオの広告費1795億円を抜いた(2004年度電通発表)。テレビの広告費2兆 436億円と比較すると、まだ10分の一にも満たない状態ではあるが、2009年には雑誌広告費(3970億円)をネットが抜くと予想され、ネットの広告 価値が確実に増加している。
ネットの場合は、純粋な「広告」という側面だけではなく、クリックするだけで、直接購入にまで結びつけるこ とができる「EC的側面」、アクセス数や来訪者経路分析などが実数で量れる「効果的側面」、来訪者に自社サイトを巡回させる「滞留型側面」などは、今後も 価値が認められる部分であろう。指標としての視聴率ではなく、購入比率にまで落としこめる「TV通販番組」的な効果を持っていることは、ネット広告の強み でもある。
日経新聞によると、米国の地上波テレビの視聴率合計は、1970年代は、ほぼ100%を占めていたが、CATV(ケーブルテレビ)や衛星放送の普及で90年代には70%台に低下し、現在は60%といわれる。
さらに衝撃的なのは、3大ネット局といわれるABC(ウォルト・ディズニー)、NBC(GE)、CBS(現:バイアコム:バイアコムはCBS分離を 2005年6月発表)のプライムタイム(午後7時から午後11時の時間帯)の広告収入が、今年、米Google社や米Yahoo社両社合計の広告収入に並 ばれるという予測だ(英エコノミスト誌)。これはすでにメディアの媒体的価値の変化を予感させてくれる。
「プライムタイム」の番組は、 すでにハードディスクレコーダーなどにより、視聴者自らの「編成」が自由に進んでいる。見たくない番組はスキップされ、生放送が気に入らなければ、代替メ ディアがひしめきあっている状態だ。ネットと融合したハードディスクレコーダーは近い将来、RSSやネットからのダウンロード番組まで収録してくれること だろう。視聴者は人気や評価の高かった今週の番組を自由に「編成」して見る時代が必ずやってくる。
もはや、カウチポテト族ですら、「人気番組順」や「友達のおすすめ順」、「評論家のTVブックマーク」などを選ぶだけで、「編成」を選べる時代となる。視聴者はボーっとTVを眺めるのにも、より自分にフィットした「編成」を求めるのではないかと考えられる。
そうなると、必要なのは、自分の「好き」「嫌い」のメタなタグ情報である。ネットとTV番組表が連動していれば、TV番組に「好き嫌い」が紐づけされると、自分の番組表から不必要な番組を「消去」することさえできるようになる。
そうなると、つまらない「報道」を繰り返すTV局はもっと、愛される番組をめざすだろうし、どの局も同じ状況ということからは確実に脱却できることだろ う。いや、そうでなければ、TVの未来はありえない。視聴率という指標で番組を制作している時代ではない。視聴者が何をもとめ、「報道」は何を伝えるべき なのかをもっともっと検討すべきだろう。